ビジネスのグローバル化やリモートワークの普及に伴い、企業が扱うデータ量は爆発的に増加しています。それに伴い、「いつでも、どこでも、安全に」ファイルへアクセスし、チームで共同作業を行うための環境構築が不可欠となりました。その解決策として多くの企業が導入しているのが、法人向けクラウドストレージです。
数あるサービスの中でも、特に法人利用に特化し、世界中の多くの企業から絶大な信頼を得ているのが「Box(ボックス)」です。本記事では、法人向けクラウドストレージBoxの基本から、その豊富な機能、料金プラン、そしてビジネスに与えるメリットまでを徹底的に解説します。さらに、近年重要度が増している電子帳簿保存法への対応についても触れていきます。
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法人向けクラウドストレージBoxとは?

Boxとは、アメリカのBox, Inc.が提供するクラウドストレージサービスです。個人向けの無料プランも提供されていますが、その真価は法人向けの高度なセキュリティと管理機能にあります。世界中で11万社以上、フォーチュン500に名を連ねる企業の約67%が導入している実績が、その信頼性の高さを物語っています。
単なる「ファイルを保存する箱」ではなく、コンテンツ管理、共同作業、業務プロセスの自動化までを支援する「コンテンツクラウド」として、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進するプラットフォームです。
Boxが法人向けに選ばれる5つの理由

なぜ多くの企業がBoxを選ぶのでしょうか。その理由は、法人利用で求められる要件を高いレベルで満たしている点にあります。
理由1: 強固なセキュリティとコンプライアンス対応
法人向けサービスとして最も重要なのがセキュリティです。Boxは「セキュリティ最優先」を掲げており、以下のような多層的なセキュリティ対策を講じています。
- データの暗号化: 保管時(At-Rest)も転送時(In-Transit)もAES 256ビットで暗号化されます。
- 詳細なアクセス権限設定: フォルダやファイル単位で、7段階のアクセス権限(共同所有者、編集者、ビューアー/アップローダーなど)をユーザーごとに細かく設定できます。
- 多要素認証(MFA): パスワードに加えて、SMSや認証アプリによる追加認証を要求し、不正アクセスを防止します。
- 監査ログ: 「いつ」「誰が」「どのファイルに」「何をしたか」という操作履歴をすべて記録し、追跡可能です。
- 国際的なセキュリティ基準の取得: ISO 27001、SOC、FedRAMPなど、数多くの国際的なセキュリティ認証を取得しており、グローバル基準の安全性を確保しています。
これらの機能により、機密情報や個人情報を扱う企業でも安心して利用することができます。
理由2: 容量無制限のストレージ
法人向けプラン(Business以上)では、ストレージ容量が無制限で提供されます。動画ファイルや設計データ(CAD)、高解像度の画像など、大容量のデータを扱う企業にとって、容量を気にせずに利用できる点は非常に大きなメリットです。サーバーの増設や容量管理といった手間から解放され、本来の業務に集中できます。
理由3: 多様なデバイスからのアクセスと共同編集
Boxは、PC(Windows/Mac)はもちろん、スマートフォンやタブレット(iOS/Android)からも専用アプリを通じて快適にアクセスできます。オフィス、自宅、外出先など、場所を選ばずに必要なファイルを確認・編集できるため、リモートワークやハイブリッドワークとの親和性が非常に高いです。
また、Microsoft 365(Word, Excel, PowerPoint)やGoogle Workspace(ドキュメント, スプレッドシート)と連携し、Box上でファイルを直接編集し、自動保存することが可能です。複数のメンバーが同時に1つのファイルを編集できるため、バージョン管理の煩雑さがなくなり、常に最新の状態で共同作業を進められます。
理由4: 1,500以上のアプリとの豊富な連携機能
Boxの強みは、独立したサービスとしてだけでなく、様々な業務アプリケーションと連携するハブとなれる点です。Salesforce、Slack、Microsoft Teams、DocuSignなど、1,500を超える外部アプリケーションとシームレスに連携できます。
例えば、Slack上でBoxのファイルを共有したり、Salesforceの顧客情報にBox内の契約書を紐付けたりすることが可能です。これにより、業務フローが分断されることなく、効率的な情報共有と業務遂行が実現します。
理由5: 詳細なアクセス権限設定と管理機能
企業のIT管理者にとって、管理のしやすさは重要な選定ポイントです。Boxは、企業のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な管理機能を提供します。
- ユーザー管理: ユーザーの追加・削除、グループ管理、ストレージ割り当てなどを一元的に行えます。
- セキュリティポリシー設定: パスワードポリシー、共有リンクの有効期限、アクセス元のIPアドレス制限などを細かく設定できます。
- レポート機能: ユーザーのアクティビティやセキュリティイベントに関する詳細なレポートを生成し、組織の利用状況を可視化します。
これらの機能により、シャドーIT(管理者が許可していないツールの利用)を防ぎ、全社的なガバナンスを強化できます。
Boxの主要な機能一覧

Boxには、ビジネスを加速させるための便利な機能が数多く搭載されています。ここでは代表的な機能を紹介します。
機能カテゴリ | 主な機能 | 概要 |
---|---|---|
ファイル共有 | 共有リンク | ファイルやフォルダへのリンクを生成。パスワード設定や有効期限、ダウンロード制限を付与可能。 |
コンテンツ管理 | バージョン管理 | ファイルが更新されるたびにバージョンが自動保存され、過去のバージョンにいつでも復元できる。 |
ごみ箱 | 削除したファイルはごみ箱に保管され、一定期間内なら復元可能。 | |
コラボレーション | コメント・タスク | ファイルに直接コメントを残したり、特定のユーザーにタスクを割り当てたりできる。 |
Box Notes | Box上でリアルタイムに共同編集できるオンラインメモ。議事録作成などに便利。 | |
ワークフロー自動化 | Box Relay | 契約書の承認プロセスなど、定型的な業務フローを自動化できる。 |
電子サイン | Box Sign | Box上で契約書などのドキュメントを送信し、法的に有効な電子署名を依頼・取得できる。 |
高度なセキュリティ | Box Shield | AIを活用して不審なアクティビティやマルウェアを検知・ブロックし、情報漏洩を未然に防ぐ。 |
Boxの料金プランを徹底比較

Boxには、企業の規模やニーズに合わせて選べる複数の法人向けプランが用意されています。ここでは主要な4つのプランを比較します。(料金は2024年5月時点の年払いの場合のものです。最新情報は公式サイトでご確認ください。)
プラン名 | 月額料金(1ユーザー) | ユーザー数 | ストレージ容量 | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|
Business | 1,980円 | 3~ | 無制限 | 基本的なファイル共有、コラボレーション機能、Microsoft 365/Google Workspace連携。 |
Business Plus | 3,300円 | 3~ | 無制限 | Businessの全機能に加え、外部コラボレーターの無制限招待、詳細なアクティビティ追跡。 |
Enterprise | 4,620円 | 3~ | 無制限 | Business Plusの全機能に加え、Box Relayによるワークフロー自動化、パスワードポリシーの適用。 |
Enterprise Plus | 要問合せ | 要問合せ | 無制限 | Enterpriseの全機能に加え、Box Shield、Box Governance、Box Signなど最上位の機能を提供。 |
中小企業であればBusinessまたはBusiness Plusプラン、大企業やより高度なセキュリティ・ガバナンスを求める場合はEnterprise以上のプランがおすすめです。自社の規模や必要な機能を見極めて、最適なプランを選択することが重要です。
Boxと電子帳簿保存法(電帳法)対応

2022年1月に改正された電子帳簿保存法により、多くの企業で請求書や領収書などの国税関係書類の電子データ保存が義務化・推奨されるようになりました。Boxは、電帳法の要件を満たすための基盤として活用できます。
具体的には、Boxの以下の機能が電帳法対応に役立ちます。
- 検索機能:取引年月日、取引金額、取引先で検索できる要件に対し、Boxの高度な検索機能で対応可能。
- バージョン管理:訂正・削除の履歴が残るため、「真実性の確保」の要件を満たす一助となります。
- アクセス権限設定:関係者以外が閲覧・編集できないように制限することで、データの改ざんを防ぎます。
ただし、Box単体でタイムスタンプの付与(別途連携サービスが必要)や、より厳密な電帳法要件(特にスキャナ保存)に完全に対応するには、設定や運用フローの工夫が求められます。
より手軽で確実な電帳法対応なら専用システムもおすすめ

「Boxの運用はファイル共有をメインとし、電帳法対応はもっとシンプルかつ確実に行いたい」
「JIIMA認証(※)を取得している安心のシステムを使いたい」
このようにお考えの企業様には、電帳法対応に特化したクラウド文書管理システムの導入がおすすめです。中でも「スペシウム」は、中小企業や個人事業主の方に最適なサービスです。
電帳法対応クラウド文書管理システム「スペシウム」
「スペシウム」は、電子帳簿保存法とインボイス制度に完全対応したクラウド文書管理システムです。一番の特長は、JIIMA認証を取得している点。これにより、法律の要件を満たしていることが公的に証明されており、安心して利用できます。
- JIIMA認証取得の安心感:「電子取引ソフト法的要件認証」「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」の2つを取得。
- シンプルで直感的な操作性:誰でもマニュアルなしで使える簡単なインターフェース。
- 低コストで導入可能:月額9,800円(税抜)からというリーズナブルな価格設定。
- AI-OCR機能(オプション):請求書などの書類をアップロードするだけで、日付・金額・取引先などを自動でデータ化。入力の手間を大幅に削減します。
Boxで全社的なファイル管理の基盤を整えつつ、経理部門では「スペシウム」を使って請求書や領収書を管理する、といったハイブリッドな運用も非常に効果的です。電帳法対応に課題を感じている方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
(※)JIIMA認証:公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が、市販のソフトウェアやサービスが電帳法の要件を満たしているかをチェックし、認証する制度。
Box導入のメリット・デメリット

改めて、Boxを導入するメリットと、考慮すべきデメリットを整理します。
メリット
- セキュリティレベルの向上:法人利用に耐えうる強固なセキュリティと管理機能で、企業の重要資産である情報を守ります。
- コストと管理の手間の削減:容量無制限プランにより、サーバーの運用・保守コストや容量管理の手間が不要になります。
- 業務効率と生産性の向上:場所を選ばないアクセスとスムーズな共同編集機能により、チームのコラボレーションを活性化させます。
- シャドーITの防止:会社として公式のストレージを提供することで、セキュリティリスクの高い個人向けサービスの無断利用を防ぎ、ガバナンスを強化できます。
デメリット
- コスト:個人向けの無料・安価なクラウドストレージと比較すると、月額費用は高めです。しかし、その分、セキュリティや管理機能が充実しており、法人にとっては費用対効果の高い投資と言えます。
- 多機能ゆえの学習コスト:非常に多機能であるため、全ての機能を使いこなすにはある程度の慣れや学習が必要です。導入時に管理者向けの研修や社内マニュアルの整備を行うとスムーズです。
- オフライン利用の制限:クラウドサービスであるため、基本的にはインターネット接続が前提となります。オフラインで作業したい場合は、事前にファイルを同期しておく必要があります。
まとめ

この記事では、法人向けクラウドストレージ「Box」について、その特徴、機能、料金、そして電帳法への対応までを詳しく解説しました。
Boxは、単なるファイル保管庫ではなく、強固なセキュリティ基盤の上で、コンテンツ管理、共同作業、業務プロセスの自動化までを実現する統合プラットフォームです。容量無制限のストレージや豊富な連携機能を活用することで、企業の生産性を飛躍的に向上させ、DXを力強く推進します。
また、電帳法のような法改正への対応においても、Boxは有効なツールとなり得ます。さらに、「スペシウム」のような専門的なクラウドサービスと組み合わせることで、より効率的で確実な対応が可能になります。
クラウドストレージの導入・乗り換えを検討している企業の担当者様は、本記事を参考に、自社の課題解決に繋がる最適な選択をしていただければ幸いです。