紙のデジタル化と法律|知らないと損する注意点と要件

紙のデジタル化と法律|知らないと損する注意点と要件

企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速する中、「紙のデジタル化(ペーパーレス化)」は多くの企業にとって重要な経営課題となっています。しかし、請求書や領収書、契約書といった国税関係書類や重要書類を単にスキャンしてデータ化するだけでは、法律違反になるリスクがあることをご存知でしょうか?

紙の文書を適切にデジタル化するためには、「電子帳簿保存法」をはじめとする法律への深い理解が不可欠です。法律で定められた要件を満たさずにデジタル化を進めてしまうと、税務調査で指摘されたり、データの証拠能力が認められなかったりといった、深刻な問題に発展しかねません。

この記事では、紙のデジタル化を進める上で必ず押さえておくべき法律の知識、具体的な注意点、そして満たすべき法的要件について、網羅的に解説します。知らないまま進めて後で悔やむことのないよう、正しい知識を身につけて、安全かつ効果的なペーパーレス化を実現しましょう。

なぜ今、紙のデジタル化に「法律」の知識が必須なのか?

法律

これまで多くの企業で当たり前だった紙ベースの業務。なぜ今、そのデジタル化において法律が厳しく問われるようになったのでしょうか。その背景には、社会全体のデジタル化への移行と、それに伴う法整備があります。

DX推進と法改正の大きな流れ

政府は国を挙げてDXを推進しており、その一環としてビジネス文書の電子化を後押しする法改正が近年活発に行われています。特に大きな影響を与えているのが「電子帳簿保存法(電帳法)」です。

この法律は、国税関係帳簿書類(仕訳帳、請求書、領収書など)を電子データで保存することを認めるものですが、そのためのルールを定めています。特に2022年の改正では要件が緩和され、多くの企業が導入しやすくなった一方で、2024年1月からは電子取引で受け取ったデータ(PDFの請求書など)の電子保存が完全義務化されるなど、対応が必須となる側面も強まりました。

このような法改正の流れは、「単なるデジタル化」ではなく「法律に準拠したデジタル化」が企業に求められていることを示しています。

法律を無視してデジタル化するリスク

「とりあえずスキャンしてPDFで保存しておけば大丈夫だろう」という安易な考えは非常に危険です。法律の要件を満たさないデジタル化には、以下のようなリスクが伴います。

  • 追徴課税のリスク: 税務調査の際に、保存された電子データが要件を満たしていないと判断されると、その経費が認められず、青色申告の承認が取り消される可能性があります。その結果、最大で10%の重加算税が課される恐れがあります。
  • データの証拠能力の喪失: 契約書などを法律の要件を満たさずに電子化した場合、訴訟などのトラブルが発生した際に、そのデータが法的な証拠として認められない可能性があります。
  • 社会的信用の失墜: 法令遵守(コンプライアンス)違反が発覚すれば、取引先や顧客からの信用を失い、事業活動に大きな支障をきたすことになりかねません。

これらのリスクを回避するためにも、紙のデジタル化に着手する前に、関連する法律を正しく理解することが極めて重要です。

紙のデジタル化に関わる主要な法律を徹底解説

紙媒体の書類を電子データとして保存するためには、主に「電子帳簿保存法」と「e-文書法」という2つの法律が大きく関わってきます。それぞれの法律が何を定め、どのような書類を対象としているのかを正確に理解しましょう。

最重要!「電子帳簿保存法(電帳法)」とは

電子帳簿保存法は、法人税法や所得税法などで保存が義務付けられている国税関係帳簿・書類を、電子データで保存することを認める法律です。保存方法は大きく3つの区分に分けられます。

  1. 電子帳簿等保存:会計ソフトなどで最初から電子的に作成した帳簿・書類(総勘定元帳、仕訳帳など)を、データのまま保存する方法。
  2. スキャナ保存:取引先から紙で受け取った書類(請求書、領収書など)や、自社で作成した紙の控えを、スキャナやスマートフォンで読み取って画像データとして保存する方法。
  3. 電子取引データ保存:メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした請求書など、電子的に授受した取引情報をデータとして保存する方法。

特に、紙のデジタル化に直接関わるのは「2. スキャナ保存」です。このスキャナ保存を行うためには、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの大きな要件を満たす必要があります。

スキャナ保存の法的要件:真実性の確保

「真実性の確保」とは、保存されたデータが改ざんされていないことを証明するための要件です。具体的には、以下のいずれかの措置が求められます。

措置 内容
タイムスタンプの付与 スキャンしたデータに、認定タイムスタンプを付与する。データの存在証明と非改ざん証明が可能。
訂正・削除の履歴が残るシステムの利用 データの訂正や削除を行った場合に、その事実と内容が確認できるクラウドシステムなどを利用して保存する。
訂正・削除ができないシステムの利用 そもそもデータの訂正や削除ができないシステムを利用して保存する。
訂正削除に関する事務処理規程の備付け データの訂正・削除のルールを定めた社内規程を作成し、それに沿った運用を行う。

実務上は、ヒューマンエラーを防ぎ、客観的な証明力を担保するために、タイムスタンプ機能や訂正・削除履歴が残るシステムの導入が最も確実で推奨される方法です。

スキャナ保存の法的要件:可視性の確保

「可視性の確保」とは、保存したデータを税務調査などで求められた際に、速やかに確認できるようにしておくための要件です。

【可視性の確保の主な要件】
・保存場所に、PC、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作説明書を備え付け、速やかに出力できる状態にしておくこと。
・電子計算機処理システムの概要書を備え付けること。
・以下の検索機能を確保すること。
1. 「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索条件として設定できること。
2. 日付または金額の範囲を指定して検索できること。
3. 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること。

これらの検索要件を自力で満たすのは非常に困難です。例えば、ファイル名に「20240520_株式会社〇〇_110000.pdf」といった規則性を持たせる方法もありますが、入力ミスや管理の煩雑さを考えると、電帳法に対応した文書管理システムの導入が現実的な解決策となります。

幅広い書類が対象「e-文書法」とは

e-文書法は、商法や会社法、税法など、様々な法律で保管が義務付けられている書類(定款、議事録、貸借対照表など)を、紙だけでなく電子データで保存することを容認する法律です。

電子帳簿保存法が「国税関係書類」に特化しているのに対し、e-文書法はより幅広い文書を対象としています。ただし、すべての書類が対象ではなく、許認可証の原本や有価証券など、一部の書類は対象外とされています。

e-文書法で電子化する場合も、基本的に電帳法と同様に「見読性(可視性)」「完全性(真実性)」「機密性」「検索性」といった要件を満たす必要があります。そのため、電帳法に対応したシステムを導入すれば、e-文書法の要件も概ねカバーできるケースが多くなります。

【実践編】法律を守って紙をデジタル化する5つのステップ

ステップ

法律の要件を理解した上で、実際に紙の書類をデジタル化していくための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。

ステップ1:デジタル化する書類の選定と仕分け

まずは、社内に存在する紙の書類を洗い出し、何をデジタル化の対象とするかを決めます。

  • 国税関係書類:請求書、領収書、契約書、納品書、見積書など(電帳法の対象)
  • 会社法関係書類:株主総会議事録、取締役会議事録、定款など(e-文書法の対象)
  • 人事・労務関係書類:雇用契約書、労働者名簿、賃金台帳など
  • その他:稟議書、申請書、報告書など社内文書

それぞれの書類に適用される法律や保存期間を確認し、優先順位をつけてデジタル化の計画を立てましょう。いきなり全ての書類を対象にするのではなく、まずは発生頻度が高く、共有ニーズの大きい請求書や領収書から始めるのがおすすめです。

ステップ2:運用ルールの策定

誰が、いつ、どのようにデジタル化作業を行うのか、具体的な運用ルールを明確に定めます。ルールを文書化し、社内で共有することが重要です。

  • スキャンの担当部署・担当者
  • スキャンするタイミング(例:書類受領後3営業日以内など)
  • スキャナの解像度(200dpi以上)、カラー設定(原則カラー)などの品質基準
  • ファイル命名規則(例:取引年月日_取引先名_金額)
  • データの保存先(フォルダ構成など)
  • 原本(紙)の取り扱い(スキャン後の確認、保管期間、廃棄ルール)

これらのルールを「事務処理規程」としてまとめておくことで、真実性の確保要件の一つを満たすことにも繋がります。

ステップ3:電帳法対応システムの選定

ステップ1、2で定めた要件を実現するためには、適切なツールの選定が不可欠です。特に、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」と「電子取引」の両方に対応したシステムを選ぶことが、将来的な業務効率化と法改正への対応力に繋がります。

【システム選定のチェックポイント】

  • JIIMA認証を取得しているか:法的要件を満たしていることの客観的な証明になります。
  • タイムスタンプ機能があるか:真実性の確保を確実に行えます。
  • 検索機能が要件を満たしているか:「日付・金額・取引先」での検索や範囲指定、組み合わせ検索が可能か確認します。
  • AI-OCR機能があるか:スキャンした画像から文字情報を自動で読み取り、データ化してくれる機能。入力の手間を大幅に削減できます。
  • 操作性は良いか:誰でも直感的に使えるインターフェースか、無料トライアルなどで確認しましょう。
  • セキュリティは万全か:アクセス制御、暗号化、監査ログなどの機能が充実しているかを確認します。

ステップ4:スキャニングとデータ登録

システムを導入し、ルールを策定したら、いよいよスキャニング作業を開始します。定めたルールに基づき、丁寧に作業を進めましょう。

特に注意すべき点は、スキャンデータの品質です。文字がはっきりと読める解像度(200dpi以上を推奨)で、書類全体が収まるようにスキャンします。スマートフォンで撮影する場合は、影が入ったり、歪んだりしないように注意が必要です。AI-OCR機能付きのシステムであれば、読み取ったデータ(取引先、日付、金額など)が正しいかを目視で確認・修正する作業も行います。

ステップ5:原本(紙)の保管と廃棄

スキャンが完了し、データがシステムに正しく登録された後、原本である紙の書類をどう扱うかを決めます。

法律上は、定期的な検査を経て、スキャンデータに問題がなければ原本は廃棄可能です。しかし、企業の規定によっては、一定期間(例:1年間)は原本も保管する、といったルールを設けることもあります。廃棄する場合は、溶解処理など、情報が漏洩しない方法を選択しましょう。

ポイント:デジタル化のプロセスにおいて、「誰がいつスキャンしたか」「誰が内容を確認したか」といった作業履歴がシステム上に記録されることが、内部統制の観点からも非常に重要です。

まとめ:法律を遵守した正しいデジタル化が企業の未来を拓く

本記事では、紙のデジタル化を進める上で避けては通れない法律の壁と、それを乗り越えるための具体的な要件やステップについて解説しました。

  • 紙のデジタル化には「電子帳簿保存法」をはじめとする法律への準拠が必須。
  • 法律を無視すると、追徴課税や社会的信用の失墜といった重大なリスクがある。
  • 特にスキャナ保存では「真実性の確保」と「可視性の確保」が重要な法的要件。
  • これらの複雑な要件をクリアし、安全かつ効率的にデジタル化を進めるためには、電帳法に対応したシステムの導入が最も現実的で確実な方法である。

法律対応と聞くと、難しく面倒なイメージを持つかもしれません。しかし、これを正しく乗り越えることで、単なるコスト削減や業務効率化に留まらず、企業のコンプライアンス強化、データ活用の促進、そして多様な働き方への対応といった、未来に向けた大きなメリットを享受することができます。

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