DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や働き方改革の流れを受け、多くの企業で紙媒体の電子化、いわゆるペーパーレス化が重要な経営課題となっています。オフィスに溢れる契約書や請求書、会議資料などをデータ化できれば、業務効率の向上やコスト削減に繋がることは間違いありません。
しかし、多くの担当者が頭を悩ませるのが「一体、紙媒体の電子化にどれくらいの費用がかかるのか?」という問題です。費用対効果が見えなければ、なかなか最初の一歩を踏み出せません。
この記事では、紙媒体の電子化を検討している企業の担当者様に向けて、以下の点を詳しく解説します。
- 電子化にかかる費用の具体的な内訳
- スキャニングやオプション料金の費用相場
- 電子化の費用を賢く抑えるためのポイント
- 失敗しないための業者選びの注意点
本記事を読めば、紙媒体の電子化に関する費用の全体像が掴め、自社に最適なプランを検討できるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
Contents
そもそも紙媒体を電子化するメリットとは?

具体的な費用を見ていく前に、まず紙媒体の電子化によって得られる大きなメリットを再確認しておきましょう。これらのメリットを理解することが、費用対効果を正しく判断するための第一歩となります。
メリット1:圧倒的なコスト削減効果
書類を紙で保管し続けることは、目に見えないコストを発生させています。電子化によって、これらのコストを大幅に削減できます。
- 保管コストの削減: 書庫やキャビネットが不要になり、オフィススペースを有効活用できます。倉庫を借りている場合は、その賃料も削減可能です。
- 印刷・消耗品コストの削減: 紙、インク、トナー、ファイルなどの購入費用が不要になります。
- 郵送・運搬コストの削減: 書類をデータでやり取りすることで、郵送費やバイク便などの費用が削減できます。
メリット2:業務効率の大幅な向上
「あの書類はどこだっけ?」と探す時間は、企業にとって大きな損失です。電子化は、この時間を劇的に短縮します。
- 検索性の向上: ファイル名や日付だけでなく、OCR(光学的文字認識)処理を施せば、書類本文のキーワードで一瞬で検索できます。
- 情報共有の迅速化: サーバーやクラウド上に保管すれば、時間や場所を問わずに複数人が同時に情報へアクセス・共有できます。テレワークの推進にも不可欠です。
- 承認プロセスの高速化: ワークフローシステムと連携すれば、申請から承認までのプロセスをオンラインで完結でき、意思決定がスピードアップします。
メリット3:セキュリティ強化とBCP(事業継続計画)対策
紙媒体は、紛失・盗難・情報漏洩・災害による消失など、多くのリスクを抱えています。電子化は、これらのリスクに対する強力な対策となります。
- セキュリティの向上: データごとにアクセス権限を設定したり、操作ログを記録したりすることで、不正な閲覧や持ち出しを防ぎます。
- BCP対策: 定期的なバックアップにより、火災や地震などの災害でオフィスが被害を受けても、重要な情報を守ることができます。
- コンプライアンス強化: 法定保存期間が定められた書類の管理が容易になり、廃棄漏れなどのリスクを低減します。
紙媒体の電子化費用の内訳と料金体系

それでは、本題である紙媒体の電子化費用の具体的な内訳を見ていきましょう。費用は主に「基本料金(スキャニング費用)」と「オプション料金」で構成されています。
費用の主な構成要素
電子化を業者に依頼する場合、一般的に以下のような作業項目で費用が計算されます。
- スキャニング費用: 紙媒体をスキャナーで読み取り、PDFなどのデジタルデータに変換する基本的な作業費用です。通常、これが費用の大部分を占めます。
- OCR処理費用: スキャンした画像データからテキスト情報を抽出し、全文検索を可能にするための処理費用です。
- ファイル名変更(リネーム)費用: 「契約書番号_取引先名_日付」のように、決められたルールに沿ってファイル名を変更する作業費用です。
- フォルダ分け(ファイリング)費用: 「年度別」「取引先別」など、指定されたフォルダ構造に整理する作業費用です。
- 書類の事前準備費用: ホチキスの針やクリップ、付箋を外したり、書類のシワを伸ばしたりする作業にかかる費用です。
- 原本の廃棄費用: 電子化が完了した紙媒体を、溶解処理などのセキュアな方法で廃棄する費用です。溶解証明書の発行には追加費用がかかる場合があります。
料金体系の種類
業者によって料金体系は異なりますが、主に以下の2つのパターンがあります。
- 枚数単価制「A4モノクロ1枚あたり〇円」というように、スキャンする枚数に応じて費用が決まる最も一般的な料金体系です。料金が分かりやすく、少量からでも依頼しやすいのが特徴です。
- 箱単価制「段ボール1箱あたり〇〇円」という料金体系です。大量の書類をまとめて電子化する場合に採用されることが多く、枚数を数える手間が省けます。ただし、箱の中にどれくらいの枚数が入っているかによって、1枚あたりの単価は変動します。
【料金相場】紙媒体の電子化費用の目安を徹底解説
ここでは、電子化費用の具体的な相場を項目別に解説します。ただし、料金は業者や書類の状態、枚数によって大きく変動するため、あくまで一般的な目安として参考にしてください。
スキャニング費用の相場
スキャニングの費用は、書類のサイズ、カラーかモノクロか、解像度(dpi)によって変動します。一般的なオフィス文書(A4/A3)と、特殊な書類(大判図面など)では大きく異なります。
項目 | 料金相場(1枚あたり) | 備考 |
---|---|---|
A4・A3(モノクロ) | 3円 ~ 10円 | 一般的な契約書、請求書など。解像度200~300dpi程度。 |
A4・A3(カラー) | 5円 ~ 15円 | パンフレットや写真付きの資料など。解像度200~300dpi程度。 |
A2~A0(大判図面など) | 100円 ~ 1,000円 | 専用の大判スキャナーが必要なため高額になる傾向。 |
書籍・製本契約書(非破壊) | 30円 ~ 100円 | 裁断せずにスキャンするため、特殊な機材と手間がかかる。 |
例えば、A4のモノクロ書類を10,000枚電子化する場合、スキャニング費用だけで30,000円~100,000円程度が目安となります。
オプション費用の相場
スキャニングに加えて、利便性を高めるための各種オプションにも費用がかかります。
オプション項目 | 料金相場 | 備考 |
---|---|---|
OCR処理 | 1円 ~ 5円 / 枚 | 文字認識精度や言語によって変動。全文検索に必須。 |
ファイル名変更 | 10円 ~ 50円 / 件 | 命名ルールの複雑さや、手作業での入力有無による。 |
ホチキス・クリップ外し | 0.5円 ~ 2円 / 枚 | 書類の枚数に応じて加算されることが多い。 |
原本廃棄(溶解処理) | 1,500円 ~ 3,000円 / 箱 | 溶解証明書の発行は別途費用がかかる場合がある。 |
これらの費用は、依頼する作業内容によって大きく変わります。どこまでを業者に任せ、どこまでを自社で行うかを事前に決めておくことが重要です。
ある調査会社のレポートによると、中小企業が初めて紙媒体の電子化に取り組む際の初期費用は、50万円〜200万円のレンジが最も多いとされています。これは、数万枚規模の書類のスキャニングと、その後の管理体制の構築までを含めた費用と考えられます。
電子化の費用を賢く抑える3つのポイント

紙媒体の電子化は、決して安価な投資ではありません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、費用を適切にコントロールすることが可能です。
ポイント1:電子化する書類を徹底的に厳選する
「オフィスにある書類をすべて電子化する」というのは、最も費用がかさむ原因です。まずは、電子化する書類と廃棄する書類を仕分けることから始めましょう。
- 優先順位をつける: 法律で保存が義務付けられている「法定保存文書」、業務上参照頻度が高い「重要文書」、情報共有の価値が高い「ナレッジ文書」など、優先順位を明確にします。
- 不要な書類は廃棄する: 保存期間を過ぎた書類や、今後使う見込みのない書類は、電子化せずに廃棄します。これだけでスキャニング対象が減り、直接的な費用削減に繋がります。
ポイント2:自社でできる作業と外注を切り分ける
専門的なスキルが不要な作業を自社で行うことで、外注費用を削減できます。
- 自社で対応しやすい作業: ホチキスやクリップを外す、付箋を剥がす、簡単な書類の仕分け作業など。
- 注意点:これらの作業を社員が行う場合、その分の人件費(本来の業務ができなくなる機会損失)が発生します。外注費用と社内人件費を天秤にかけ、どちらがトータルでコストを抑えられるかを慎重に判断しましょう。
ポイント3:複数業者から相見積もりを取る
これは基本中の基本ですが、非常に重要です。必ず3社程度の業者から見積もりを取り、費用とサービス内容を比較検討しましょう。
- 比較すべき項目:
- 基本のスキャニング単価
- オプション料金の詳細
- 最低発注ロットや初期費用の有無
- セキュリティ対策の内容
- 納品までのスピードと品質
- 過去の実績(特に自社と同業種や同種の書類)
単に価格が安いだけでなく、品質やセキュリティ、サポート体制などを総合的に評価し、自社に最も合った業者を選ぶことが成功の鍵です。
電子化業者の選び方で失敗しないための注意点

「安さ」だけで業者を選んでしまうと、「スキャンした画像の品質が低くて文字が読めない」「情報漏洩のリスクがあった」といった失敗に繋がりかねません。費用と合わせて、以下の点も必ずチェックしましょう。
セキュリティ対策は万全か?
企業の機密情報や個人情報を含む書類を預けるため、セキュリティ対策は最も重要なチェック項目です。
- 認証資格の有無: プライバシーマーク(Pマーク)やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得しているか。
- 物理的セキュリティ: 作業場所への入退室管理、監視カメラの設置、施錠管理などが徹底されているか。
- 作業者の教育: スタッフへのセキュリティ教育が定期的に行われているか。
品質は信頼できるか?
電子化したデータが使い物にならなければ意味がありません。データの品質を事前に確認しましょう。
- スキャン品質: 解像度は適切か、画像の傾きやノイズは補正されるか、白紙ページは自動で削除されるかなどを確認します。
- OCRの認識精度: OCR処理を依頼する場合は、その文字認識率を確認します。手書き文字や専門用語への対応可否もポイントです。
- 無料トライアルの活用: 多くの業者では、少量の書類を無料でスキャンしてくれるトライアルサービスを提供しています。実際に電子化したい書類のサンプルで品質を試し、納得した上で契約しましょう。
【結論】紙媒体の電子化は終わりじゃない!その後の管理が重要

ここまで紙媒体の電子化にかかる費用や業者選びについて解説してきましたが、一つ重要なことがあります。それは、「電子化はゴールではなく、スタートである」ということです。
大量の書類をPDFにしただけでは、単にパソコンの中にデジタル版の書類の山ができたに過ぎません。そのデータをいかに効率よく管理し、活用していくか。その仕組み作りこそが、電子化の費用対効果を最大化する鍵となります。
電子化したデータを適切に管理するためには、以下のような機能を持つ「文書管理システム」の導入が不可欠です。
- 高度な検索機能(全文検索)
- 厳密なアクセス権限設定
- バージョン(改訂履歴)管理
- 電子帳簿保存法への対応
- ワークフローとの連携
スキャニングという「入り口」の費用だけでなく、その後の「管理・活用」までを見据えたトータルな視点で、紙媒体の電子化プロジェクトを計画することが成功への近道です。
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